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薄毛用カツラ業界の価格構造と
それを打ち破るオンライン販売
事例研究:完全オーダーメイドカツラ“WITH”
written in 2001.2.8

 “商品の価格”は製造原価に加えて様々な要素によって構成されている。例えばそれは、流通にかかるコストであったり、営業、宣伝にかかるコストであったりする。しかし、それら価格を構成する要素の内訳は一般消費者側には知らされることなく「一般的な価格」として通っている。それが商売というものだ。

 ベンチャー的な視点でビジネスチャンスを狙うのであれば、製造原価以外の余分なコストが分厚く上乗せされている商材に注視してみると、新規参入できるすき間が見つけやすい。その具体例の一つとして「カツラ」がある。

 日本の成人男性では4人に1人が薄毛に悩んでいると言われていて、その比率は年々上昇している。これは昔よりも食生活が欧米型に移行したことと、社会生活の中で抱えるストレスが増加していることに大きな理由があるようだ。また、同様の理由により女性でも薄毛に悩む人口は増加している。そのため、育毛またはカツラに関わる市場が急成長していて、カツラ市場だけでも1000億円を超える。カツラを着用するユーザーは全国で約80万人。

 現在、国内のカツラ業界では、大手メーカー2社が市場シェア率80%以上を占めている。この背景には“カツラ”がプライバシーの観点から、なかなか口コミや紹介で広がりにくい商品であるために、テレビCMを中心とした莫大な広告宣伝費を投入して新規顧客開拓をしなければならないという現状がある。マスメディアを利用した大規模な宣伝広告ができるのは、大手メーカーのみに限られるために、後発となる中小業者の新規参入が難しい。

 市場規模は拡大しているにも関わらず、業界は大手によって寡占化されていくという状況は消費者にとっての弊害も少なくない。その決定的な影響は何といっても「価格の高さ」だ。

 現在のところ、薄毛に悩む男性顧客が大手メーカーからカツラを購入する際の平均価格は1個あたり約80万円が相場。カツラは薄毛の進行状況や顧客の髪質によっても仕様が異なる完全オーダーメイド制で製作されるために、均一価格ではないが相当に高い価格であることは間違いない。しかも、カツラは毎日着用するものであるため、通常は複数所有して使い分けるのが一般的。そのため、一度着用した顧客に対しては2個目、3個目のカツラをメーカー側から勧められることになる。更に、カツラも毎日の使用で劣化するために3〜4年で寿命がくる。結果として、カツラユーザーの大半は毎年 50〜100万円以上をカツラの製作とメインテナンスに費やしている。


カツラ業界の新規顧客獲得策

 薄毛用カツラがこれほどまでに高価なのは、莫大な宣伝広告費を投入して新規見込み客を獲得、その後は専用サロンにまで誘導して丁寧な無料カウンセリングを実施、そしてようやく契約にまでたどり着くという、長い契約獲得経路に理由があるようだ。

 無料カウンセリングをおこなう専用サロンは全国各地の駅周辺など交通の便のよい雑居ビルの2階、3階に位置していることが多い。出入りしやすい1階にないのは、「目立ちすぎないように」という顧客のプライバシーを守る配慮がされているため。

 外観は地味な反面、サロン内部は顧客がリラックスしやすいようにと、内装には気を遣っている。また、これもプライバシー保護のために、顧客とのカウンセリング用としては、すべて個室が設けられている。これらのサロン運営経費も、最終的にはカツラの販売価格から捻出されていることになる。


<●カツラメーカーが提供するサービスと顧客誘導の流れ>

  [派手な宣伝広告]
     │
     ↓
  [電話問い合わせ]
     │
     ↓
  [サロンでの無料カウンセリング]
     │
     ↓        2個目以降のカツラ
  [商品の提案と見積もり]←────────┐
     │                 │
     ↓                 │
  [正式な契約]              │
     │                 │
     ↓                 │
  [カツラの製作]             │
     │                 │
     ↓                 │
  [カツラのフィッティングと自毛のカット] │
     │                 │
     ↓                 │
  [カツラの定期的なメインテナンス]    │
     │                 │
     ↓                 │
  [新しいカツラの提案]──────────┘



カツラ業界の価格構造をうち破る波

 いくら広告宣伝にコストがかかるからといっても、80万円という大手メーカーの価格設定にはやはり疑問を感じずにはいられない。従来のカツラメーカーが新規顧客開拓と無料カウンセリングに手間とコストをかけることによって、カツラの価格が上昇するのであれば、その部分を効率化することによって価格設定を大幅に変えることができるのではないかと考え、具体化されたのが「WITH」という高品質・低価格のカツラである。

 同商品の販売を手掛けるのは、有限会社あみネット(福岡市)という会社。同社は代表の宮崎弥生氏(34歳)がホームページ制作やシステム開発を主な業務として2000年8月に立ち上げたSOHO企業だが、自社が開発したアフィリエイトプログラムのシステムを活用したオンラインショップを運営するための商材を探していた。

 そこで10年来付き合いのある知人であるカツラ愛用者が、30年間カツラを扱ってきた大阪の理容師を紹介した。この理容師は、最近、大手メーカーが販売するカツラの価格が高騰していることに問題意識を感じ、何とか同じ品質のカツラを低価格で販売できないものかと模索していたところへ宮崎氏と出会い、インターネットを活用して高品質、低価格のカツラを効果的に販売することを企画することとなった。これが「WITH」というオリジナルブランドのカツラだ。

完全オーダーメイドカツラ“WITH”

 ここで気になるのが“WITH”の品質だが、大手メーカーが80万円相当で販売しているものと同等と考えてよい。というのも、大手メーカーではカツラの製作を自社工場でおこなうのではなく、中国の外部工場に委託する形をとっている。全世界で流通しているカツラの約9割は中国で生産されているのがカツラ業界の構造である。

 そこで“WITH”を企画するにあたっては、中国のカツラ工場をリサーチして実際に訪問、そして交渉することにより、数年前まで国内大手メーカーのカツラ製作を担当していた工場との間でWITH製作の契約を交わすことに成功したのだ。製作する工場が大手メーカーと同じであれば、当然ながら製作されるカツラの品質も同等のものとなる。しかも、“WITH”の価格は14万8千円のワンプライスと、大手メーカーのものよりも圧倒的な安さを実現した。既にアナログ販路では 600個以上の販売実績もあり、顧客満足度は高い様子。

中国のカツラ工場の様子


オンライン+アナログによるカツラ販売の仕組み

 大手メーカーのカツラが高いのは前述の通り、原価コストに新規顧客獲得のための広告宣伝費とカウンセリング費用が上乗せされているためだ。このような商品認知のための広報活動と顧客サポートによって、薄毛に悩む見込み客が大手メーカーに対する信頼感や安心感を抱いて高額な料金を払っているというのも事実。

 そのため“価格が安い”だけではカツラは売れる商品ではない。またインターネットのみで販売を完結させることができない難しさもある。そこで“WITH”ではオンラインからの受注をフォローするために、全国の理容店を組織化することで、カツラのカウンセリングから製作のための採寸、アフターケアーまでを担当してもらうという方式を考案し、2000年2月1日から専用のwebサイトをスタートさせた。

 “WITH”のwebサイトから購入申込をした顧客に対して、最も近いエリアのWITH指定の理容店が紹介される。顧客はその理容店を訪れてカツラの型取りをしてもらい、そのデータを元にして中国の工場でオーダーメイド型のカツラが40〜50日程度で製作される。完成したカツラは理容店に納品されるため、顧客は再度理容店を訪れて最終調整と自毛のカットをおこなうという流れだ。理容店側には、あみネットより、カツラ代金(14万8千円)の中から数十%の手数料が支払われる。

 また、このカツラ販売の仕組みの中で最も重要となるのが“WITH”のwebサイトへ見込み客を誘導する集客活動だが、あみネットでは、ここへ自社が開発した成功報酬型アフィリエイトプログラムを採用している。これは、様々なwebサイトから“WITH”のサイトへリンクしてもらい、同経路でユーザーからの購入申込がされた場合には、成功報酬として 8,000円がリンク元のサイトへ支払われるというもの。

理容店向け代理店募集ページ


<●カツラ製作の流れ>

    ┌─[見込客] [見込客] [見込客]
    │   │     │     │
    │   ↓     ↓     ↓
    │ [web] [web] [web]
    │   │     │     │
    │   └─────┼─────┘
カツラの│         │
型取りと│         │成功報酬型
着用後の│         │による集客活動
サポート│         ↓
    │     ┌───────┐カツラの ┌─────┐
    │     │ “WITH”の │発注と製作│カツラ工場│
    │     │ webサイト│←───→│ (中国)│
    │     └───┬───┘     └─────┘
    │         │
    │         │顧客の紹介
    │   ┌─────┼─────┐
    │   ↓     ↓     ↓
    └→[理容店] [理容店] [理容店]

 理容店にとっては“WITH”と提携することのメリットは大きい。インターネット経由で新規顧客を紹介してくれると同時に、カツラ販売の手数料も得ることができる。カツラユーザーの明確な特徴として、カツラを着用している間は、それをサポートしてくれる理容店または専門サロンに通い続けるという傾向が強いために、“カツラ”を通して獲得した顧客は安定した固定客として確保することができるのだ。また、“WITH”側でもオンラインのみではサポートすることができない、型取りやアフターケア等を、全国の理容店に任せることができなければ「カツラのオンライン販売」という試みは成功しない。

 以前からカツラを理容店で販売するという試みは各所で展開されているが、全国的な成功を収めているケースは見あたらない。理由としては、カツラの品質が未成熟で「安かろう悪かろう」的な商品が多く出回ってしまったことと、顧客のプライバシーが通常の理容店では守りにくかった点などがあげられる。

 その点、“WITH”の場合、品質については前出の通り大手メーカーど同等のカツラが安価で提供できる。また、顧客のプライバシーについては、理容店側が定休日や営業時間外の枠を利用、または顧客の自宅に出向いて、カツラの採寸、カット、調髪をこなう体制を整えている。

 カツラユーザーまたは見込み客の大半は「知られたくない」というコンプレックスを抱えている。この内向的な心理に対して、積極的な営業攻勢は逆効果となるために、全国の理容店をネットワーク化した上で、オンライン販売を展開する“WITH”が、具体的にどのような形でネット上の該当ユーザーに認知されて、信頼性を高めていくのかには、今後期待しながら注目していきたい。


これは正式会員向けJNEWS LETTER 2001年2月8日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
 
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