中高年~シニアの起業を促進する上で、スモールビジネスが売買できる仲介市場の整備は必要。後継者がいない事業を引き継いだり、自分が高齢になった時に、事業を売却できることにより、起業プランを柔軟に立てることができる。 (JNEWSについてトップページ
スモールビジネスを購入する中高年者の起業モデルと仲介業者

JNEWS
JNEWS会員配信日 2012/2/17

 長年会社勤めをしてきた中高年者が、ゼロから自営業をスタートさせると言っても、短期間でビジネスを軌道に乗せることは難しい。そこで「他者のビジネスを購入する」という選択肢がある。

もともと米国では、自営業者の世襲(親の仕事を子供が継ぐ)が日本よりも少ないため、高齢の経営者が引退したいと考える時は、店舗や会社を丸ごと他人に譲りたい(売りたい)というニーズがあるのだ。

そのため、比較的若い年齢(40~50代)でリタイアする人の中では、以前から興味を持っていた分野のスモールビジネスを買い取ることも、起業方法の一つになっている。そして、10年後、20年後に自分が仕事から退く時は、そのビジネスを再び他者に売るという循環モデルが成り立っている。

《スモールビジネス売買の循環モデル(例)》

当然ながら、ビジネスを買い取る際には、その店や会社が十分な収益を上げられているか、事前に調査することが重要になるが、経験が乏しい起業希望者にとって、売り手の言いなりにならずに、適正な購入価格の交渉をすることは難しい。

そこで、米国には「ビジネスブローカー」という中小ビジネスの売買仲介を担当する専門職があり、各州の公式なライセンスを取得しないと「ビジネスブローカー」と名乗れないルールになっている。

ビジネスブローカーは、自社のサイトを立ち上げて、その中で“売り物件”を掲載している。たとえば、フロリダ州のビジネスブローカー、Truforte社では、レストラン、スポーツショップ、自動車修理工場、エステサロンなどの事業が売買されている。売買の金額は、店舗の規模や売上の状況によっても異なるが、個人の起業者でも手が届く、5万~20万ドル(約400~1600万円)で提示されている案件が多い。

Truforte社の売り案件リスト(米フロリダ州)

起業者がビジネスを買い取った後には、前オーナーから引き継いだ店舗の設備、在庫、従業員らのリソースを有効に活用しながら、「ニューオーナーシップ」と看板を上げて、顧客に新鮮な変化を期待させる店舗が多い。

歯科クリニックや託児所なども売買案件として扱われるが、サービスの品質や信頼性が求められる業種では、売買契約の前後で1年ほどの移行期間を設けて、前オーナーからの指導を受けながら、固定客をそのまま維持できるように努めている。

【ビジネスブローカーとしての起業】

 他者のビジネス(店舗や会社)を購入することによる起業の利点は、既に軌道に乗っている事業を、そのまま受け継ぐことができて、前オーナーがどれだけの所得を稼いでいたのかもわかるため、買収後の見通しも立てやすい。案件の一例として、11万ドルの売値が付いてるレストランの前オーナー所得は、約8万ドル(600~700万円)である。

しかし、これはオーナーチェンジした後も保障される所得ではなく、新オーナーに代わった途端に、客足が途絶えてしまうようでは、以前の収入を維持していくことはできない。その点では、投資リスクのある起業スタイルでもある。

それよりも堅いのは、「ビジネスの買い手」になるのではなくて、売買の仲介者、すなわち「ビジネスブローカー」の立場になることだ。実際に米国では、シニアの起業テーマとして、ビジネスブローカーの人気は高まっている。

ビジネスブローカーになるためには、養成スクールのカリキュラムを受けるのが一般的で、「国際的ビジネス・ブローカー協会(IBBA)」が中心的な教育機関としての役割を果たしている。IBBAの講座はオンラインでも受講することが可能だが、その内容は、財務諸表の分析、税務、売買契約についての法律、売買価格の査定方法、マーケティングなど多岐にわたっている。

カリキュラムをすべて履修すると、IBBA公認ブローカーとしての資格が与えられて、各州の営業免許を取得後に開業することができる。また、ビジネスの売買では、建物や土地の取引も絡むことが多いため、不動産ブローカーとしての資格も取得して兼業することが望ましい、とされている。

国際的ビジネス・ブローカー協会(IBBA)

開業後は、自らの人脈・Webサイト・広告などを使って売買案件の募集をして、仲介が成立した段階で、ビジネスの売り手側から取引額の約10%を成功手数料として得ることが、彼らの収入源になっている。

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・スモールビジネスを購入する中高年者の起業モデル
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